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【東洋医学初級編~三大理論と五臓の変調~】

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日本においての東洋医学とは、古代中国で発生した中国伝統医学のことを指します。

広義では、アジア圏で発生した伝統医学全体のことを指すこともあります。

(インドやスリランカのアーユルヴェーダ、イスラム・

東南アジア周辺のユナニ医学、チベット・ネパール周辺のチベット医学

などがこれに当たります。)

2000年以上の歴史と経験に基づき、実践され磨かれてきた東洋医学は、

数ある伝統医学の中でも、最も理論的であると言われています。

また、治癒をもとめる過程で、鍼灸治療、漢方薬、薬膳、按摩、気功など

様々な手段を用いることも稀であるとされています。

古代中国で生まれ、東アジア各地に伝わり、

日本においては漢方医学、韓国においては韓医学として根付いた東洋医学ですが、

鍼灸や漢方薬などを使うという共通点はありながらも、

理論や診断、実践される施術方法などは、

それぞれの国の風土、気候に合わせて発展していきました。

日本では、中国のような大陸気候とは違った、

島国独特の風土や気候での生活、

また、そこで採れる食物を食べて育った人たちの身体に合わせて

東洋医学も発展していったのです。

江戸時代に全盛期を迎えた日本の東洋医学は、

鍼灸治療の他、按摩や指圧などの手技治療も行われていくようになります。

また、中国、韓国に比べ、比較的刺激量が穏やかな施術が中心の為か、

日本の鍼灸治療や按摩・指圧治療は欧米の方々にも好まれるようになりました。

現在では、WHO(世界保健機構)でも
鍼灸、漢方薬などを含めた東洋医学の有用性が認められており、
世界的に注目されています。

目次

【三大理論】

さて、中・韓・日それぞれの国で独自に発展を遂げた東洋医学ですが、

好き勝手に違うものになっていったわけではありません。

東洋医学はなんといっても、古代中国の思想の上に成り立つ学問ですので、

不変の原則ともいえる、「三大理論」というものがあります。

こればかりはどの国でどのような変化を遂げていったとしても変えることができません。

どのようなものなのか、一つずつ見ていきましょう。

〈天人合一思想:てんじんごういつしそう〉

天人合一思想とは人体の機能と形は天地自然に対応しているという思想の事です。

ここでいう「天地自然」とは、

「地球も含め、宇宙全体」ということです。

天地自然と人体の活動は対応しており、

すべて無関係ではない、

つまり、人も自然の一部であるということを説明しています。

簡単な例を挙げると

「今日は雨が降りそうだから頭痛がする」

「春は五月病など自律神経が乱れやすい」

など、普段の生活の中によくあることとして存在しています。

意外と難しいことではないですね。

〈陰陽論:いんようろん〉

陰陽論とは、すべての万物は陰と陽の属性に分けることができ、

拮抗したり、対立したり、協調し合いながら存在しているという考えの事です。

ここでいう「すべての万物」というのは、

「人も含めこの世の中のすべての事柄」を指しています。

例えば…

  • 上は陽⇔下は陰
  • 左は陽⇔右は陰
  • 明は陽⇔暗は陰
  • 昼は陽⇔夜は陰
  • 熱は陽⇔寒は陰
  • 表は陽⇔裏は陰
  • 動は陽⇔静は陰
  • 夏は陽⇔冬は陰
  • 男は陽⇔女は陰

などというように、

この世のあらゆるものが陰と陽から成り立っていると陰陽論ではいっています。

この陰陽のバランスが乱れると人は健康を害し、病気になると考えられています。

また、自然界や社会情勢などにも当てはめることができます。

自然界の陰陽バランスが整っていると、

自然災害などがなく、農作物が良く育ち、家畜も肥え、

疫病も流行らず、人も自然界も穏やかで豊かになります。

人心が穏やかだと戦争などの争いごとや国同士の摩擦もなく、

株価も安定し、さらに人も自然界も豊かになる、と言えます。

これもまた、難しい話ではありませんね。

〈五行論(説)〉

五行論とは、自然界におけるすべての物は

木・火・土・金・水の五つの属性に分けることができる、

という考え方です。

木・火・土・金・水のことを五行と言います。

臓器や身体の各器官、

自然界の様々な物質などをその特性に応じて五行に分類し、

診断や治療、養生法などに活かします。

木(もく):樹木が伸びていくさまから成長、伸展、上昇などという要素

火(か):火が燃えるさまから上昇、温熱などという要素

土(ど):大地のような役割から播種、生かす、収穫などという要素

金(ごん):金属が形を変えて存在できることから変革、清潔、下ろすなどという要素

水(すい):水面のように穏やかな性質から潤す、流れるなどという要素

このようにそれぞれの特性に合わせて、

臓器や身体の各器官を含めた自然界のあらゆるものを分類していきます。

例えば、

木の季節は春
火の季節は夏
土の季節は長夏(または土用)
金の季節は秋
水の季節は冬

木の味は酸
火の味は苦
土の味は甘
金の味は辛
水の味は鹹(しおからい)

木の色は青
火の色は赤
土の色は黄
金の色は白
水の色は黒

木の感情は怒
火の感情は喜
土の感情は思
金の感情は憂(悲)
水の感情は恐(驚)

木の器官は目
火の器官は舌
土の器官は口唇
金の器官は鼻
水の器官は耳

木の穀物は麦
火の穀物は黍(きび)
土の穀物は稗(ひえ)
金の穀物は稲
水の穀物は豆

木の肉は鶏
火の肉は羊
土の肉は牛
金の肉は馬
水の肉は豚

など、様々なものが五行に分類されています。

そして重要なのは、臓器も分類されているということです。

木の臓器は肝
火の臓器は心
土の臓器は脾
金の臓器は肺
水の臓器は腎

例に挙げた季節、味、色、感情、器官、穀物、肉など

五行に分類されるさまざまなものは、

すべてこの五つの臓器(五臓といいます)を癒したり、

変調が現れたり、弱ったり、好んだり、補ったりするものたちです。

東洋医学では、病のタイプも五臓に分けて考えます。

すなわち、その人の病がどのタイプか、

または、その人のどの臓が変調しやすいのか、

属している五行はどれなのかを知ることで、治療法にも、予防法にも役立てることができます。

では、五臓とはどのようなものなのでしょうか。

〈五臓〉

東洋医学では、脈診や腹診、舌診といった診断法で
患者さんのその日の状態を伺います。
そして、
まずは五臓の内のどれが悪いのかを決め、
選穴(使うツボを選ぶ)を行います。

五臓は次のような特徴があります。

肝…血に関わりが深く、自律神経系、女性なら婦人科系、感情、
精神、目、筋肉などに影響を及ぼし、春に変調しやすい。

リーダーシップに優れ、責任感が強いが、
感情的であったり、ストレスが精神面に現れたりしやすい。

心…血脈に関わりが深く、循環器系、判断力、
意識、舌、血管などに影響を及ぼし、夏に変調しやすい。

判断力に優れ、周囲を明るくする反面、
気分屋、自分勝手にもなりやすい。

脾…胃や腸に関わりが深く、消化器系、
造血、唇、口内、などに影響を及ぼし、内臓下垂気味の人も多い。
夏の終わりや、土用(季節の変わり目)に変調しやすい。
物事の計画や準備に余念がなく、教育などにも向いているが、
目立つことが苦手であったり、1人でいることを好んだりする傾向もある。

肺…皮膚、鼻、のど、アレルギーなどと関わりが深く、
呼吸器系、代謝などに影響を及ぼし、秋に変調しやすい。
冷静であるが感傷的であるという二面性や、正義感も強いが、独善的という面もある。

腎…骨や髪、冷えや下半身の不調、エイジングとの関わりが深く、
泌尿器系、生殖系などに影響を及ぼし、冬に変調しやすい。

精を臓す(生命活動の為のエネルギーをしまっておく)臓器の為危険を冒さず安心・安定を好む。

〇〇恐怖症などを持っていることも多い。協調性に優れているが、消極的であることも多い。

少し難しくなってしまいましたが、

このような五臓の特徴を念頭に置き、鍼灸師は治療を進めていきます。

本来は主訴と照らし合わせながらさらに細かく分類していきますが、

それはまた次の機会に。

入門編として、少しでも東洋医学を知っていただけたら幸いです。

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