感情が病のもと~七情について~

2020.09.14

 

東洋医学での「病」とは、気血や陰陽のバランスが乱れたり、臓腑の働きや経絡の流れが滞ったりした結果と考えますが、その気血や陰陽、臓腑、経絡に影響を与える原因を分類すると外因内因不内外因の三つに分けることができます。

 

外因…身体の外側から侵入してきた原因のこと

内因…身体の内側からおこった原因のこと

不内外因…外因、内因のどちらでもない原因のこと

 

前回は外因についてお話しましたので(外因について詳しくお知りになりたい方はコチラ※【季節や気候が病のもと~外因について~】、今回は内因について書いてみようと思います。

 

内因とは

 

内因とは身体の内側から発生し、気血や陰陽、臓腑などを痛め、病の原因となるものをいいます。

「身体の内側から発生するもの」とは、強すぎる感情体調に影響を及ぼすほど過度な感情のことを指します。

怒(ど)喜(き)思(し)悲・憂(ひ・ゆう)恐(きょう)驚(きょう)の7つがあり、この7つをまとめて七情(しちじょう)といいます。

 

では、一つずつ見ていきましょう。

 

怒:ど…気上がる

怒は過度な怒りの感情のことで、激しい怒りや、イライラが続くなどがあると肝の疏泄作用(気が全身に行き渡るよう調節する作用)が低下し、気血が上(主に頭)に上りやすくなります。

頭痛や脳梗塞、脳卒中、高血圧、動悸、息切れ、不眠などの症状が現れることがあります。

また気血が頭に上るため、さらにちょっとしたことでイライラしやすくなります。

行き過ぎた怒の感情で気血が上に上りすぎることを「気が上がる」と言います。

 

喜:き…気緩む

喜は過度な喜びの感情のことで、喜びすぎると心に宿る神志(五臓のうち、心に宿る神のこと。生命活動、精神活動を支配している。神志は〈魂・神(神志)・意・魄・志)の中でもっとも上位に位置する神で他の魂・意・魄・志を統括している)の支配が弱まり、精神活動の統率がとれなくなります。

不安、不眠(多夢、悪夢)、精神不安定、集中力の低下、泥酔時の奇行などが現れることがあります。

行き過ぎた喜の感情で神志の支配が弱まることを「気が緩む」と言います。

 

思:し…気結す

思は過度に思い悩む、過度に考えすぎることをいい、思い悩みすぎる、考えすぎると脾の運化作用(栄養の運搬・消化のコントロール)が弱まり、消化・吸収に支障をきたします。

また気化作用(気・血・津液・精の間での転化、汗、尿、便の生成)にも影響が出るため、胃腸の調子が悪い、食欲不振、胃が痛い、不眠、動悸などが現れやすくなります。

行き過ぎた思の感情で脾や胃に不調が出ることを「気が結する」と言います。

 

悲・憂:ひ・ゆう…気消える

悲・憂は過度な悲しみ、憂いのことで、深い悲しみや憂うことが多いと肺を病み、あまりに長引くとやがて気が消えてしまうと言います。

肺が変調することで、気、津液の巡りが滞り、咳、喘息、痰が絡む、鼻水、鼻づまり、むくみ、皮膚の乾燥などがおこりやすくなります。

行き過ぎた悲・憂の感情で気が弱まることを「気が消える」と言います。

 

恐:きょう…気下る

強い恐怖感を抱くなど、あまりに恐ろしい目にあうと腎が影響を受け、蔵精機能(腎精=エネルギーを貯蔵する)が低下します。失禁(大小便ともに)、白髪の増加、耳の不調などがみられることがあります。

また納気(吸った気を腎に降ろす作用)が弱まるため息が吸いにくい、息切れなどの呼吸障害を起こすことがあります。

行き過ぎた恐の感情で腎が影響を受け降ろすという作用に症状が出ることを「気が下る」と言います。

 

驚:きょう…気乱れる

驚はびっくりする出来事や、激しい驚きのことで、あまりに驚きすぎると腎が変調をきたします。

腎が変調すると気が乱れ、統率がとれなくなります。

精神活動に混乱が生じ、さらにちょっとしたことでも驚きやすく、ビクビクするようになり、精神が安定しないことで不眠に陥ることもあります。

また、急速な老化も腎気が乱れるせいであると考えられています。

行き過ぎた驚の感情で腎の気が乱れることを「気が乱れる」と言います。

 

感情が身体や心に与える影響の例

 

このように、強すぎる感情は身体や心にさまざまな影響を及ぼします。

難しいと思われたり、東洋医学の中だけでの話だと思われたりする方もいらっしゃるかと思いますが、意外と簡単に起こりうるもので、皆さんも経験なさっている可能性があります。

例えば、

 

すっごく腹の立つことがあってイライラして夜になっても眠れない!

こんなことは皆さん一度や二度は経験があるのではないでしょうか。

これは「怒」の感情に肝が影響を受けたことによるものと考えられます。

気が上りすぎて脳が休めない状態です。

 

オリンピック選手が金メダルを取った瞬間、飛び跳ねて会場中を走り回る

本来だったら今年の夏はたくさん見られたシーンだったのではないでしょうか。

試合中は冷静だったのに大きな喜の感情で普段はしないような行動を取ってしまうのは神志の統率が緩んでしまった証拠と言えます。

応援している私たちも飛び跳ねたかもしれませんね。

 

ずっと抱えている悩み事があってそのことを考えると胃が痛い、食欲がない

これもよく聞く話です。

強すぎる思の感情が運化作用や気化作用に影響を及ぼしたために起こると考えられます。

 

激しい精神的ショックを受けたあと急激に白髪が増えてしまった

「一晩で総白髪になってしまった」なんて話も聞きますね。

恐の感情が強く腎が病んでしまうとこのようなことが起こります。

ストレスにさらされ続けていても腎は傷つき、突発性の難聴なども起こることがあります。

 

感情のコントロール

 

心穏やかに過ごすことが心身の健康のために理想ではありますが、なかなか難しいかもしれません。

イラっとすることは四六時中起こりますし、悩み事や考え事の一つや二つはあるでしょう。

恐かった~と思うこともびっくりすることも日常では普通に起こります。

もちろん、嬉しい楽しいという喜びの感情は人生には絶対になくてはならないものですよね。

豊かな感情は人生を彩るもの、抱えすぎず、ため込みすぎず、感情に振り回されすぎないよう上手にコントロールできるようになるのが健康の秘訣かもしれません。

 

鍼灸治療の脈診や腹診では五臓六腑の状態をみることができます。

五臓六腑の状態を知ることができれば、どの感情がコントロールしにくいかをお伝えすることができます。

ご興味のある方はぜひ鍼灸師にご相談ください。

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